一般財団法人日本プロスピーカー協会 認定シニアプロスピーカー
縁ある人を物心両面の幸福に導ける技術を体得している真の指導者「プロスピーカー」として生きる人物に焦点をあてた本コーナー。今回は大手保険会社の役員も務められた伊豆原孝さんに、人生理念が明確になっていった経緯、シニアプロスピーカーチャレンジを通して得てきたことを語っていただきました。
アチーブメントの講座を受講するようになったのは、損保ジャパンのリスク管理部長に昇進して半年ほど経ったタイミングでした。それまでは直属の部下を持たず、プレーヤーとしての側面が強かったのですが、突如として部下を100人持つ身となりました。自分の思うとおりに行動してくれない部下に苛立ちが募った私が取った行動は、デスクの後ろのホワイトボードに部下に指示した業務を書き出すことでした。プレッシャーを感じた部下たちから「パワハラボード」と呼ばれるようになりました。
このようにマネジメントに苦労していた折に高校の同窓会があり、社会人になったばかりの後輩のアチーブメント社員と名刺を交換。紹介いただいた青木社長の講演会で、「私が学ぶべきものはここにある」と確信し、『頂点への道』講座の受講を決めました。
講座の中で一番心に響いたのは、アチーブメントピラミッドの概念です。以前から心のどこかで「目的が大事だ」と感じていたものの、目の前の仕事をこなすことに必死で、人生の目的など考える余裕もなく走り続けていました。しかし、受講をとおして、自分が本当に大切にしなければならないものに気づくことができ、永らく断絶状態にあった父のもとを訪ね、関係を修復することができました。 部下に対しても、選択理論心理学に基づいた関わり方をし、一人ひとりの願望を親身になって聴くことを地道に続けました。少しずつですが、部下の願望と向き合いながらマネジメントできるようになり、「パワハラボード」と呼ばれたホワイトボードは、部下に励ましのメッセージを発信する「パワーボード」に変わりました。
業務の中でも講座での学びは役立ちました。目的から一貫した「リスク管理で世界一になる」という具体的な目標を掲げることで、部下一人ひとりの仕事への取り組みが主体的になり、2018年の春に保険会社のリスク管理では日本最高ランクの格付けを獲得することができました。
選択理論とアチーブメントテクノロジーを学ぶことで、私の人生は豊かになりました。しかし、最初からプロスピーカーを目指していた訳ではありませんでした。なぜなら、プロスピーカーとして活動している方の多くは、幼いころに虐待を受けた方や、倒産の危機を経験されている経営者だったからです。それに比べ、私は両親に愛され、30年以上も同じ会社に勤め、恵まれた道を歩んできたサラリーマンです。そんな私がプロスピーカーとなり伝えることがあるのか疑問を抱いていました。
しかし、考えてみれば、この世の中でそんな苦しい体験をしてきた人は実はほんの一握りです。それでも目的を明確に持たず、日々の仕事に追われている組織人たちにこの技術を伝えていくことは間違いなく意味があることだという思いが強まり、「サラリーマンに勇気と力を与えたい」という思いが芽生えてきたのです。
さらに思いを強くしてくれた出来事があります。それは、アチーブメントテクノロジーコースのアシスタントに入ったときの話です。トレーナーの方から指名され、受講生のみなさんにシェアすることになりました。はじめは自分の言葉が伝わるのか半信半疑でしたが、学んで実践してきたこと、父親との経験談を話したときに、涙を流して聞いてくれる人がたくさんいたのです。そのとき、私のメッセージにも価値がある、プロスピーカーとして伝えることが使命なんだという気持ちが湧き上がってきたのです。
ベーシックプロスピーカー試験に合格したのは2019年でした。プロスピーカーとなって始めたのは、自社内で全国の支店を回り、講演会で選択理論とアチーブメントテクノロジーを伝えることでした。その活動を支えてくれたのは、各地で活躍するJPSAの仲間たちです。2020年にコロナ禍となったときには、組織人で学んでいる人たちの継続学習のお手伝いをしたいという思いから、組織人部会を立ち上げました。ここまで本当に多くの方々の助けをいただきながら活動を続けることができています。
私がJPSA活動をするなかで感じたことがあります。それは、自分の人生理念である「感謝・愛・責任」により確信が持てるようになったということです。講演や勉強会などの「分かち合い」をしていくと、自分がアチーブメントで学んできた技術が言語化され、明確になっていきます。それと同時に、これまで自分の人生がよくなってきた背景にこの技術があることが認識でき、いまはその技術を再現性の高いものとして身に付け、技術に守られているという実感が湧いてきます。すると、技術や仲間に対して心からの感謝が芽生えてきて、この技術を自分に縁ある人に伝えていきたい、という使命に変わっていくのです。自分の成長という縦軸、縁ある人への貢献という横軸、この縦軸と横軸をともに伸ばしていけるのが、JPSA活動なのです。すると、人生理念への納得度がさらに高まり、自分の中に人生理念から日々の実践までの一貫性が生まれます。
これによって、JPSA活動を「やらなければならない」と感じることなく自然体でできるようになりました。自分のなかに一貫性をとおすこの感覚は、シニアプロスピーカーチャレンジをする過程でより磨かれていったものであり、プロスピーカーになる価値だと思います。
部下のマネジメントに四苦八苦していた私が、自分の成長だけでなく、縁ある人の人生の質の向上に貢献する人生を歩めるようになりました。また、選択理論とアチーブメントテクノロジーに対する確信と感謝の気持ちが生まれ、より豊かな人生を送ることができるようになりました。より多くの人にこの技術を広めることで、これからも、「縁ある人の幸せにとことん寄り添うプロスピーカー」として活動し続けてまいります。