縁ある人を物心両面の幸福に導ける技術を体得している真の指導者「プロスピーカー」として生きる人物に焦点を当てた本コーナー。今回はJPSA認定シニアプロスピーカーの髙橋並子さんです。コロナ禍で売上最大99%減という逆境に直面するも、V字回復を遂げて「過去最高業績」へと成長を創り出されました。「プロスピーカーになっていなかったら、この結果は創り出せなかった」と語る髙橋さんに、プロスピーカーを目指す過程で得られたことやJPSAの価値についてお話しいただきました。
私は結婚を機に、夫が4代目となる船宿あみ達の女将に就任しました。当時は「社員に舐められてはいけない」という強い思い込みがあり、社員を思い通りに動かそうとする外的コントロールを無意識に使っていたのです。その結果「経営者vs社員」という見えない壁ができ、離職は止まらず、お客様からのクレームが絶えない。そんな悪循環のなかにいました。
「このままではいけない」と2017年に出会ったのが『頂点への道』講座でした。学んだことは、人は内側から動機づけられるという選択理論の考え方です。私はそれまでの関わりを改め、社員一人ひとりの欲求が満たされる環境づくりに徹底して舵を切りました。すると社員たちが、自ら主体的にお客様目線の接客を体現し、サービスの質が向上。それにより口コミやリピーターが急増し、受講から2年で売上は2億円アップ。学びの効果を確信した私は、女将として社員に深く理念を伝えられる存在になりたいと、2019年にプロスピーカー・トレーニング・プログラムを受講しました。しかし、半年間の講座修了直後、業界を襲ったのが新型コロナウイルスだったのです。
忘れもしない2020年2月14日。同業他社でクラスターが発生したという報道がされると、キャンセルの電話が事務所に鳴り響きました。お花見シーズンのはずが客足は0になり、売上は最大で99%減。いつも賑わっていた屋形船が、真っ暗な川面に静かに浮かび、まるで泣いているようでした。そこから売上90%減という状況が続いたのは実に2年半以上。出口の見えないトンネルのようで「この状況を抜け出せるのか」と、毎晩不安に押しつぶされそうでした。
そんな私を支えてくれたのが、JPSAの仲間の存在でした。この状況を知った仲間からの数えきれない励ましの言葉。応援のために屋形船に乗りに来てくれた方々もいました。ある先輩プロスピーカーからは、愛のある言葉をいただきました。「社員を守ると決めたんでしょ。後ろの扉を閉めてプロスピーカーを目指しなさい」と。プロスピーカーとは学びを実践し業界トップの実績を出し続け、縁ある人を幸せに導く真のリーダーです。そのため、どん底の私がプロスピーカーを目指していいのか正直迷いました。しかし「成功した人がプロスピーカーではなく、成功すると決めた人がプロスピーカーである」。「コロナがあったから今があると言える未来を必ず創り出し、社員を守る」と意味づけし、プロスピーカーにチャレンジすると決めました。
チャレンジの過程で何度も取り組んだのはセルフカウンセリングです。なぜ私は「女将」として生きるのか、「あみ達」をどんな会社にしたいのか。深く掘り下げました。繰り返し考えるなかで、心の奥底にあったビジョンが段々と強く明確になっていきました。それは「どんな状況でも明るく育ててくれた母のように、周囲を明るく照らす女将でありたい」「社員を守り抜き、にぎやかなあみ達を絶対に取り戻す」という揺るぎない覚悟です。不安で目が覚めるような朝もありました。しかしプレゼンの練習を何百回も繰り返し、ビジョンを語ったことが強力な自己暗示となり「絶対にこの未来を現実にする」という強い信念へと変わっていったのです。
この信念が原動力となり、天丼のテイクアウトやアフタヌーンティー・クルーズなどの新しい挑戦をスタート。こうした取り組みが数々のメディアに取り上げられ風向きが変わり、2020年12月にはベーシックプロスピーカーにも合格。
その後もコロナの影響が続くなか、社員を守り抜くという信念のもと、社内に理念浸透研修を導入するなど、攻めの姿勢を貫いたことで売上は徐々に回復しました。2023年にはやっとの想いでV字回復を遂げ、2024年の売上はコロナ前の155%に向上。社員に決算賞与を出せるまでになりました。そして2025年にはコロナ前の168%を記録し過去最高業績を達成。
もし、プロスピーカーを目指していなかったら、途中で諦めていたかもしれません。この過程で得られた最大の価値は「未来を切り拓く力」だと断言できます。
事業が再び軌道に乗り始め、私は現状に満足し人生の踊り場にいる感覚を覚えました。そんなときもまた、JPSAの仲間の姿に影響を受けました。ベーシックプロスピーカー合格後も挑戦を重ね、シニアプロスピーカーに合格し、成長し続ける先輩プロスピーカーの姿を間近でみたのです。私もさらにステージをあげたいと思うようになり、2025年にシニアプロスピーカーを目指しました。
その過程で向き合ったのは夫や先代への深い感謝です。100年以上続くあみ達が提供してきた価値、逆境をともに乗り越えてくれた夫。そのどれもが当たり前ではなく彼らの存在があって、女将という役割を全うできている。その意味を噛み締めたとき、「次世代に誇れる船遊び文化を創造し、それを継承する」というビジョンが明確になりました。
これまでの過程を見ていた息子が「後を継ぎたい」と言ってくれるまでになり、2026年にはシニアプロスピーカーに合格。
これからは、高級屋形船としてミシュラン獲得を目指すなど新たな挑戦を続けるとともに、次世代に誇れる仕事にすることを目指しています。「最も伝統文化を広めた女将として、歴史に名を残す」。次はこの未来を形にできるよう、邁進してまいります。

特別なひとときを提供する「屋形船あみ達」
